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Leonard two-handed salmon14 feet

Leonardのツーハンドサーモン14フィートを入手しました。なかなか市場では見かけないレナードのツーハンドサーモンロッドはかなりやつれた状態で送付されてきました。早速、フェルールをアルコールでクリーニングをおこない全体を繋いでロッドアクションを確かめてみました。ロッドアクションは伝統的なスペイ、665gとかなり重量感のあるサーモンロッドです。

20年使い込んだ沢田さんのランドロック(335g)と比較してざっど倍の重量があるロッドはそう簡単に振ることが出来ないと十分承知しているのですが、やはり「古い竹竿マニア」には理屈ではない何か特別な魅力がこの古い竿にはあるようです。これからこのロッドのレストアをおこない、冬の鮭釣りに間に合わせてたいと考えています。


このレナードは全長が430cm、14feet 3 inch、コンディションはこのような状態です。

・ヴァーニッシュは全体がメルトダウン状態
・ストリッピングガイトとトップガイドは欠損
・他のガイドは全て錆びている。
・フェルールの結束は全て問題なし
・バットセクションのブランクは6角の一部が剥がれている。
・コルクは汚れがあるものの、シェビングにて使える状態
・リールシートはクリーニングが必要

これから暇を見つけてレストアを開始し、その詳細状況お伝えしていきます。


2009.9.5
・ガイドの取り外し、ヴァーニッシュの剥離(その1)


今週からレストアを開始しました。手順としては、ガイドを1コづつ取り外しながらヴァーニッシュの剥離をおこなう方法で
少しづつ剥がしていきます。ナイフでスレッドを切り落としながらガイドを外していきます。

ところが、このスレッドが硬くてなかなか切れません。やっとの思いで切れたスレッドを見てみるとシルバーのティンセルでした。

なるほど、当時のサーモンロッドは、スレッドにかかる負荷をいくらかでも軽減させようと細いティンセルを使ってガイドを止めていたようです。
また、長い間ティンセルで固定してあったことからブランクには黒々としたシミが残っていました。

さて、ガイドを外し終わるといよいよ剥離剤を塗ってヴァーニッシュを落とす作業の開始です。剥離剤を塗って数秒後にはヴァーニッシュが
ドロドロに溶けて簡単にティッシュで拭く事が出来ます。それもヴァーニッシュが古いほど剥離剤で良く溶けるような気がします。このレナードは
伝統的な段巻きではないのでそれほど古いロッドではないのかな?と思っていましたが、この溶け方から想像するとそうでも ないようです。
(でも正確な年代は不明です。)

ティッシュで拭いた後にアルコールを使って再度ブランクをクリーニングしたら次のガイド外しの作業に移っていきます。バットセクション、
ミッドセクションの半分まで作業をおこなった段階で、ティンセルではなくスレッドを10cmくらい巻いてある部分に気が付きました。
この部分は補修を施してあるようです。ひょっしたら折れているか、ひびが入ってる可能性があることから、ここでレストア作業を
一時中断し今後の作業方法を再考することにしました。


2009.9.12
・ガイドの取り外し、ヴァーニッシュの剥離(その2)


先週中断したヴァーニッシュの剥離を再開しました。ミッドセクションのスレッド部分を慎重にカッターで切り落としていくと、
中から錆びた金属片が出てきました。その部分のブランクをじっくり見てみると、ちょうど竹のふしの部分にほんのわずかに
クラックが入っており、恐らくその部分の補強の為に金属片を活用したのでしょう。

また、このロッドのガイドは全てティンセルで巻かれて補強されているのに、補修部分だけがオーバーラッピングのスレッドで
あることから想像すると、恐らくプロフェショナルなリペアーではないとも思われます。それと、当時はコーティング剤の発達が
今のレベルに達していなかったからなのでしょう。

さて、最終的なリペアー方法に関しては、ブランクの状態から判断すると、特に心配することのないレベルだとわかり
“ほっと”しました。その後、剥離作業は順調に進み、最終的に綺麗なブランクが現れてきました。外したガイドは全体の設計図
に貼り付け、再度ガイドを取り付ける際に間違わないように工夫しておきました。


2009.9.22
・ブランクの接着補修


今週は、剥がれかかったブランクの補修をおこないました。メルトダウンした塗装を剥離したことで、ブランク全体の状態を点検
事が出来るようになりました。バットセクションのトップ1ヶ所、ミッドセクションの上部と中間部分の2ヶ所、計3ヶ所のブランクを
手で押すと少々歪みます。ブランクの補修はこの3ヶ所と決め、準備段階として補修の箇所をマスキングテープで印をしておき ます。

補修の方法としては、フレックスコートのグルーを使って補修することにしました。まず、楊枝で補修部分にこんもりとグルー
を盛り付けます。その後、何度を両サイドから部分を手で押したり・離したりを繰り返しをおこない、グルーをなるべく奥まで十分
染み込ませようと試みてみました。

1ヶ所終了後にブランクからはみ出したグルーをテッシュで拭き取り、タコ糸で何重にもバインディングをおこないます。
この作業を3回繰り返しながら全体の作業を完了させました。グルーは約半日程度で乾きますが、念のために3日間このままでしておくことにしました。


009.10.10
・ブランクの接着補修(その2)、フェルールの取り外し、接合部分の補修   

9月の連休釣行や本業多忙の中レストア作業の中断を余儀なくされてしまいましたが、この1週間は集中して作業を再開する事が
出来ました。前回修復したブランクには問題ありませんでした。最終仕上げはナイフでグルーのはみ出た部分を削り落とし、500〜
2000番までのサンドペーパーを使ってブランク全体を磨き上げまて完成しました。


とことが、出来上がったブランクの最終状態を確認してみると、フェルールからかすかなきしみ音が聞こえきます。
場所の特定をしてみると、トップとミドルセクションのフェルールに問題があることが分かりました。ロッド入手時の点検では
フェルールに問題がなかったのですが、ラッピングを全て外してみると状態は変わっていました。恐らくフェルールのラッピングが
ティンセルでおこなわれていたことから、フェルールの強度が保たれていたのではないでしょうか。

むを得ず、レストア作業工程を変更し、トップとミドルのフェルールを外し再度接着することにしました。
しかし、ここで再び問題が発生してしまいました。フェルールのピンがなかなか抜けません。経年の結果ピンとフェルールが一体化
してしまったようです。1ヶ所のピンを抜くのに何度も作業を中断し、フェルールのダメージを与えていないか確認をしながらピンを
叩きました。結局ピンを抜くのに1時間もかかってしまいました。

この困難な作業をおこなった時点で、「フェルールもなかなか外せないのでは?」との不安がよぎりましたが、その不安は見事に的中です。
フェルールがなかなか緩みません。更にフェルールにキズをつけれませんのでソフトタッチプライヤーを使っての作業の為に先端部分が滑り、
作業は何倍もの時間がかかってしまいます。ヒートガンで熱しすぎるとブランクが炭化してしまいますので、1回のヒーティングは
2分程度に留め、ヒートガンで暖めてはソフトタッチプライヤーでねじる工程を10回程度繰り返した結果、ようやくフェルールが緩んで
きました。

はりサーモン用のロッドは渓流用のロッドとは訳が違うことが良くわかりました。フェルールが外れた段階で、ブランクの
接合部分の状態を再度確認すると、今度はミドルセクション上部の六角とのはがれていました。どうやら今回は「ブランクの接着補修作業」
の繰り返しが起きるようです。修復方法としては、先ず楊枝で六角部分を広げ、再度別の楊枝でグルーを流し込む込む方法とりました。
作業完了後タコ糸でバインディングして翌日に状態の確認をおこないます。


2009.10.17
・ブランクのコーティング、フェルールの再取付、フェルールの取り外し(その2)

やっとブランクのコーティングを始めることが出来ました。通常おこなっているディピィングを考えたのですが、これまでの遅れた作業を取り戻す
理由からハケを使ってコーティングをおこなうことにしました。ただし、仕上げはディピングとほぼ同等を求めますので、全体を薄く塗ることを
心掛けておこないました。


コーティングは2回で仕上げます。1回目は1:1:6、2回目は1:1:4の配合に薄めてブランク全体にコーティングをおこないます。トップとミドル
セクション上部のフェルールは取り外してありますので、この部分には特に重点的に塗りました。それは、今後も接合部分から腐食おこさない
ために最善策からです。2日間乾燥させ、再度コーティングをおこないました。

コーティングが乾燥する間に、フェルールとフェルールの接合部分以外をNEVERDULLを使って錆びやクスミに磨きをかけておきます。
フェルールの再接合は、素早く硬化するDEVCONをプロショップでは推奨されているようですが、私はホームセンターで購入出来るエポキシ
接着剤を使用しています。費用は748円で、なかなかパフォーマンスが高い接着剤だと思います。実用強度10時間と記載されていますが、
念のために1日間乾燥させた方が良いでしょう。

さて、フェルールの再接着が完了し、ロッド繋いでフェルールの状態を確認してみると、トップとミドルセクションのきしみ音は消えていました。
しかし、バットセクションとミドルセクションとの接合部分からは新たなきしみ音が聞こえてきました。フェルールを手で押さえロッドを振りながら
問題のある箇所を調べた結果、ミドルセクション下部のフェルール内部にガタつきがあります。やっとフェルールの再接合が終わり「ほっと!」
していたのですが、再度のフェルールを取り外すことなり少々がっかりしてしまいました。理由がフェルールとピンの大きさから作業が更に困難
になることが予想されるからです。古いロッドのレストアで「フェルールの取外し・再接合」は一番困難を極める作業だと私は考えます。
しかし、このロッドのレストアが完了すると鮭釣りが待ってますので、我慢して再度フェルールの取り外し作業をおこなうことにしました。

先ずピン抜き作業ですが、いくらハンマーで叩いてもピンが抜けません。この硬さは前回の比ではありません。もちろん、ピンは1.25mmとトップ
のピンより0.2mm太く、長さも11mmと3mm程度長く、見た目ではかなり太く長く感じられます。結局前回のピン抜きは1時間、今回は2時間かか
ってしまいました。一方フェルールの取り外し作業ですが、ヒートガンで3分程度フェルールを熱し、ソフトタッチプライヤーの大型タイプでひねり
ますが全く動きません。10回ほど同じ事をおこなって指の皮が剥けそうになってしまったのでこの日の作業は中断しました。

翌週の初めより毎日1時間程度で作業を再開、ヒートガンで熱しては、プライヤーで捻りながら、ようやく3日目にフェルールが緩み始めて
来ました。本当にフェルールの取り外しは、根気の入る作業だと思います。その後、フェルールの接合部分の汚れをやすりで取り除き、
2回コーティング作業を施した後にエポキシ接着剤で再固定しました。

レストア作業を開始して2ヶ月、ようやくブランクが完成しました。ロッド全体を繋いで振ってみると、フェルールのきしみ音は完全に消えて
いました。ブランクのコーティングはハケで無事に塗ることも出来結果、全体が綺麗な光沢で覆われていました。


2009.10.24
・コルクグリップのシェビング、リールシートの磨き

コルク全体のコンディションには問題がありません。腐食はなく、表面が汚れてだけですので、昨年自作したコルクシェイパーを使って
表面を紙やすりで全体研磨する事にしました。作業は短時間で終わるのですが、研磨し過ぎるとコルクを交換しなければならないので
研磨の状態を何度も確認しながら作業を進めていきます。


コルクの研磨には紙やすり(#240〜2000)を使って仕上げていきます。先ず、#240で全体の汚れを落として、その後800,1000,1500,2000と
順番に番手を上げていきます。#240では汚れが綺麗に落ちますが、全体はざらざらな状態です。しかし、800番〜は表面をつるつる状態にまで
仕上げられます。完成後のコルクはまるで新品のような肌触りを実感する事が出来ました。ここまで作業時間は1時間強でした。

作業上に気を付ける点は、回転数を常に上げたり下げたり調整する事です。回転数が上がるとロッドがしなり始め、最悪破損することが考え
られます。また、左手で掃除機のノズルを持ち、右手で紙やすりを持っての作業ですので、万一の際にモーターのスイッチを切ることが難しいと
思います。しかし、私のシェイパーは足ふみペダルで回転数を調整出来るタイプなので、万一の際に、直ぐ回転数を弱める事が出来ますので、
この方法がベストだと思います。

次に、リールシートを磨く作業を開始しました。リールシートのさび・クスミは特に強く、このまま使うか磨きをかけるか迷う状態です。
このまま使うのも結構渋いかもしれません。さて、磨き作業は、@全体にNeverdullを使って徐々に磨き込んでいき、全体が完了してきた
段階で、Aラストリムーバーを使って更に磨きをかけていきます。最後の仕上げで、BCRC556を使って表面のコーティングをおこない、
今後のさび対策をおこなっておきます。今週の作業で、ブランク全体の作業がほぼ完成しました。残る作業は、ガイドのさびとコーティング後に
スレッドのッピングとエポキスコーティングで全体のレストア作業が完成させる予定です。


2009.11.05
・ガイドの修復

殆どのガイドは、さび・腐食がひどく、このままでは使えません。通常であればリプレイスを考えるのですが、 この当時のガイドは、
いわゆる「逆ひねりガイド」reverse twist guideですので、現在では入手が出来ません。以前、ビンテージのロッドクラフトとパーツ
扱っているアメリカのプロショップより取り寄せたことがあるのですが、使っているワイヤーの太さや、仕上げの状態が当時と異なって
いたので、新品はやはり期待出来ません。やむを得ず、さびたガイドをある程度補修して使うことにしています。


作業は、先ずルーターを使って大まかなさびを削り落とします。先端がワイヤーで出来たものが作業効率を上げると思います。その後、
#240、800程度の紙やすりで全体を滑らかにして、仕上げはNever-dullを使います。作業はそれほど複雑ではないのですが、12本の
ガイドを完成させるまでには3時間近くかかってしまいました。ここまでが第一段階です。

その後ガイドを黒く塗っていきます。ガイドにはモノフィラメントの先端にテープで止め、先ず黒いラッカーで2度塗っていきます。
Ant flyのラッカーコーティング用に20年以上も使っているものですが、少々粘度が高くなってきているので薄め液で柔らかくして使っています。
ラッカーは30分程度で乾燥しますが、半日後乾燥させてから2回目を塗っていきます。

ここまでが第二段階です。ラッカーは剥がれやすいので、乾燥後にウレタンコーティングを2回施します。コーティング剤は
ブランクに使うものと同じものですが、配合量を1・1・2と少々濃くしておきます。

これによりガイドに光沢が生まれ、ラッカーの剥げれを最小限に抑えてくれます。ただし、ガイドは、常にフライラインの摩擦にさらされます。
何年持つかはロッドの使用頻度によると思います。ちなみに、5年前に同じ方法で修復したガイドですが、未だに剥げてません。


2009.11.08
・ガイドのラッピング・コーティング(その1)

レストア作業もいよいよ最終段階となり、ガイドのラッピングとコーティングを開始しました。欠品のストリッピングガイドとトップガイドですが、
メノウガイドがジャストマッチしますので、一番大きめのガイドをジャンクパーツからリプレースを選んでおこなうことにしました。


ガイドはそのままの状態でラッピングをおこないません。まず、ブランクとの接合面をやすりで平らにしておきます。これにより、ラッピンングの際に
わずかな段の発生を抑えます。次に、やすりをかけた部分はウレタンコーティングが剥げますので、ラストリムーバーを塗っておきます。

さて、ラッピングですが、サーモンロッドに合う太いスレッドで、GudebrodのNCPでサイズはDを使いました。カラーブリザーパーを塗る手間も
省けますので、作業効率も上がります。それでもバットセクションとミドルセクションで5時間くらいかかってしまいました。ラッピング終了後に
エポキシコーティングの1回目、かなり薄めのはけ塗りをおこない、翌朝までモーターにかけておきます。

2009.11.22最終回
・ガイドのラッピング・コーティング・ミッドセクションの補修(その2)

レストア作業最終段階その2を報告します。この2週間ほぼ2日に1回のコーティング、その間にトップセクションへガイドラッピンングと
トップガイドの接着をおこないました。コーティングは合計4回おこなったことになります。

理由は、ラッピング・スレッドのささくれ処理に手こずったためです。ガイドの強度を考えてスレッドの太さをDサイズしたこと、
ガイドの大きさ、フェルールの太さなどの関係から通常のロッドに出来るささくれより大きくなってしまい、その処理に時間を要してしまったからです。


4回のコーティングのうち3回は薄めのコーティングをハケで塗り、硬化確認後にささくれをやすりでなめらして再度コーティングをおこないました。4回目のコーティングは、エポキシうすめ液をこれまでの半分程度程度に減らし、楊枝を使ってエポキシをこんもり盛り付けるような感じで少々多めにコーティングをおこないました。

目安としては、コーティンング後の状態が何となく湾曲になっているかを確認する必要があります。この作業でほぼ10日間かかってしました。

今週、最後に残っていたミッドセクション上部にあったクラックの補修作業として、黄色のスレッドで約1cm程度ラッピング、コーティンングを3回ほどおこないました。この作業で8月末より開始したレストア作業がようやく終了しました。

このレナードサーモンロッドは当初それほどレストア作業に時間を要しないで完成すると思っていましたが、フェルールの交換に思いのほか手こずり、ほぼ3ヶ月かかってしまいました。特に、ミッドセクション下部のフェルールを取り外すのに1週間も要し、外せない場合は切り落とすしかないかなとギリギリのとことまで悩んだ作業でしたが、外せた時の感激は涙ものでした。さて、いよいよこのロッドを使って試し振りを12月におこない、状況をブログへUPする予定です。

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